少年サッカーのコーチは、毎回、トレーニングのメニューを考えますよね。僕は、トレーニングのテーマは考えるけど、実際にどんなトレーニングを行うかは当日、子どもたちを観てから決めています(あまり良いコーチではないかも。笑)
少年サッカーの指導書などを読むとトレーニングメニューがたくさん載っていますよね。最近だとYouTubeでも、たくさんのトレーニングメニューが見れます。
例えば、バルセロナのトレーニングメニューとか。でも、同じトレーニングをしても子どもたちがバルセロナの選手たちと同じスキルを習得できません。
バルセロナと同じトレーニングをすれば上手くなるんじやないの?
その考えは危険だよ。子供のスキルに合わせたトレーニングが必要なんだよ。
そうなのか?
トレーニングには3原理5原則があるんだよ。
トレーニングメニューは子どもたちのレベルに合わせたものでなければ、なりません。
もちろん、本やYouTubeのトレーニングメニューを参考にはしますが、同じトレーニングを行うことはない。
トレーニングメニューより重要なのは、トレーニングの目的(何を習得して欲しいのか)とトレーニングの考え方だと思います。
少年サッカーに限らず、スポーツのトレーニングの考え方には『3原理5原則』があります。この記事では、トレーニングの『3原理5原則』を紹介します。
トレーニングの3原理5原則とは
この3原理5原則を全て網羅したトレーニングを用意するのは難しいですが、指導者が少しでも意識をすることでより良いトレーニングにすることが出来ます。
トレーニングの『3原理5原則』
少年サッカーに限らず、スポーツのトレーニングの目的は、スキルの習得。トレーニングを行い、子どもたちのスキルを上げることがトレーニングの目的です。
特に少年サッカーでは、トレーニング中に気をつけなければいけないのは、子どもたちが楽しんでスキルを習得できるかどうか。
少年サッカーではつらいトレーニングはいらない。
トレーニングには、3つの原理と5つの原則があります。
トレーニングとは、筋力トレーニングや有酸素トレーニングだけではなく、サッカーに必要なスキルの習得を目的にしたトレーニングなど全てのトレーニングを含みます。
子どもたちに飽きさせず、楽しみながらトレーニングをさせるときに『3原理5原則』を意識し、トレーニングの目的、意図を考えトレーニングメニューを考えましょう。
トレーニングの3つの原理
トレーニングなしでは、スキルの習得をすることは不可能です。スポーツだけでなく、勉強でも、仕事でもトレーニングを行わなければ、スキルを習得できませんよね。
トレーニングしないとスキルの習得は出来ないもんな。
そうなんだよ。でも、ただトレーニングしていても、なかなか上手くならないんだよ。
確かに。同じトレーニング時間でも上手くなるチームとそうじゃないチームがあるもんな。
その重要なトレーニングの原理をしっかりと押さえておかなければ、無駄な努力になってしまいます。そのためにも、トレーニングのベースとなる3つの原則を理解しましょう。
トレーニングとは、スキルを習得するために行うものです。効果的にスキルを習得するためには、トレーニング中にどのような現象が起こっているのかを理解することが大切です。
やみくもにトレーニングを行っても、スキルを習得できないばかりか、身体を痛めてしまったり、変なクセがついてしまったりしてしまいます。
1.過負荷の原理
トレーニングで一定レベル以上の負荷を与えることで、その負荷に耐えられるように子どもたちの能力が向上します。
すでに習得している能力を刺激できる負荷でなければなりません。刺激を得る負荷以上(過負荷)のトレーニングを行うことで効果が表れてきます。
つまり、ラクな負荷のトレーニングを行っても意味はなく、持っている能力を少しでも超えた負荷のトレーニングを行わなければ、効果は表れません。
2.特異性の原理
トレーニングは、行うメニューによって習得できるスキルが変わります。目的に応じたトレーニングメニューを選ぶ必要があります。
アジリティ系のトレーニングを行えば、敏捷性は高くなりますし、テクニック系のトレーニングを行えば、技術が身につきます。
反対にアジリティ系のトレーニングを行っても、技術の向上は期待できません。
3.可逆性の原理
トレーニングで習得したスキルは、トレーニングを止めると元のレベルに戻ってしまいます。能力を維持するためにはトレーニングを継続しなければなりません。
トレーニングで習得したスキルを維持するためには、トレーニングを継続する必要があります。もちろん、トレーニングを止めたらすぐに効果がなくなると言うことはありません。
一般的にはトレーニング期間が長ければ、失われる速度は遅く、短ければ早いと言われています。
3原理のまとめ
トレーニングの3原理について紹介してきましたが、まとめると
習得して欲しいスキルを定め、目的に合ったメニューで(特異性の原理)、子どもたちができるか、できないかギリギリのレベル設定(過負荷の原理)のトレーニングを行わなければ、効率的にスキルの習得はできません。 そして、習得したスキルのレベルを維持するためには、継続してトレーニングを続ける(可逆性の原理)必要があります。
効率的にスキルを習得するためには、同じトレーニングメニューを続けることではありません。
トレーニングの5原則でもお話しますが、少年サッカーでは、同じ目的(習得して欲しいスキル)のトレーニングを手を変え、品を変え、子どもたちに飽きさせないようにする必要があります。
そこが少年サッカーの指導者の腕の見せどころです。
トレーニングの5原則
トレーニングの5原則とは、3原理と同様に効果的にスキルを習得するために大切なルールになります。
トレーニングの3原理はトレーニングを行うときのベースと言うか、根本的な法則のようなイメージですが、トレーニングの5原則は、トレーニングを行う場合に適用される基本的な考え方、決まりのようなもの。
何も考えず、見たことあるトレーニングをやっていたよ。
コーチが意識しないと子供たちは上達しづらいよ。
トレーニングの5原則は、指導者が少年サッカーの普段のトレーニング時に気をつけるべき、考え方だと思います。
トレーニングの5原則は、3原理を実践する場合の考え方です。僕は冒頭でもお話しましたが、テーマを決めてグランドに向かいますが、トレーニングメニューは子どもを観てから決めます。それは、このトレーニングの5原則を意識しているから。
少年サッカーで、良い指導者かどうかを判断するとき、僕はトレーニングメニュー、オーガナイズの決め方、トレーニング中の指導者の声の掛け方を確認します。その基準となるのがこの『トレーニングの5原則』です。
トレーニングの5原則に合ったトレーニングを行える指導者は(無意識でも)優れた指導者だと思います。
この5原則が守れているトレーニングを行えれば、子どもたちがふざけたり、飽きたりすることがなく、集中してトレーニングを行えます。
1.意識性の原則
意識性の原則は『トレーニングの目的を明確にして知識を深める必要がある』ということです。
少年サッカーの指導者は、何を意識したトレーニングなのかを子どもたちに伝える必要があります。トレーニング中のコーチングで意識をさせましょう。
大人から観ると子どもたちのプレーは、できていないことがたくさんあります(笑)でも、あれもこれも『ダメ出し(指摘)』してはいけません。そのトレーニングで習得して欲しいスキル以外は見なかったことにする。
大人と違って子どもたちは、たくさんのことを一度に意識することはできません。なので、気になってもトレーニングの目的(習得して欲しいスキル)以外は、指摘をしてはいけません。
2.全面性の原則
全面性の法則は『バランスがとれた発達を目指しましょう』ということです。
色々なトレーニングメニューを行い、バランス良くスキルを身につけましょう。
どうしても少年サッカーをしている子どもたちは、どうしても『サッカーひと筋』の子どもが多いと感じます。身体の発育には、他のスポーツを経験したり、サッカー以外の身体の動かし方を学ぶことが必要です。
色々な身体の動かし方を経験することでバランスが良い身体の発育が行えるようになります。ただ、少年サッカーの練習時間で、他のスポーツを取り入れるのは難しいと思います。
例えば、普段のトレーニングにコーディネーショントレーニングを取り入れたりしながら、バランスの良い発育を考えましょう。
また、サッカー選手には、身体能力の他に必要な能力があります。サッカーに必要な能力は「身体(運動)能力」「技術」「精神力」「戦術理解力(判断力)」。その4つの能力をバランス良く伸ばすトレーニングが理想です。
僕が少年サッカーのトレーニングを見ていると圧倒的に判断を伴ったトレーニングが少ないと感じます。サッカーで一番大切な戦術理解力(判断力)にもかかわらず、習得させようとしている指導者が圧倒的に少ない。
3.反復性の原則
反復性の原則とは『トレーニングを効果的に行うには、定期的に繰り返し行う必要がある』ということ。
ひとつのスキルを習得するまでは、繰り返しトレーニングを行う必要があります。一度、トレーニングをして習得できるようなスキルは、ほとんどありません。
なので、繰り返しトレーニングを行う必要があります。ただ、少年サッカーの場合、トレーニングの対象者は子どもたち。子どもたちは大人に比べ、飽きっぽい。
少年サッカーの場合、同じメニューを繰り返し行うと子どもたちが飽きてしまい、『意識性の原則』が守れなくなってしまいます。なので、同じスキルを習得するためのトレーニングメニューを用意する必要があります。
サッカーの対人トレーニングの場合、表裏一体になっているトレーニングが多いので、同じ練習メニューでも、子どもたちに何を意識させるか(意識性の原則)で違う目的のトレーニングになることが多い。
練習メニューの引き出しを増やすことも大切ですが、子どもたちに何を意識させるかを考えたコーチングも重要です。
また、3原理の『可逆性の原理』でもお話しましたが、トレーニングを止めると元のレベルに戻ってしまいます。習得したスキルを維持、向上させるためにはトレーニングを継続する必要があります。
4.漸進性の原則
漸進性の原則とは「トレーニングは能力に合わせて徐々に強度を上げる必要がある」ということです。漸進(ぜんしん)とは『順を追って少しずつ進んでいくこと』です。
同じトレーニングでもスピードを求めたり、難易度を調整して徐々に強度を上げたりしながら、子どもたちができるか、できないかのギリギリのレベルでオーガナイズする必要があります。
少年サッカーでは、伝統なのか分からないですが、同じトレーニングを毎日繰り返している場面を良く見かけます。僕に言わせると時間の無駄、努力の無駄遣いです(笑)
できる子どもには、学年に関係なく、どんどん負荷を上げていかなければ、なりません。小学生は成長の過程で早熟な子どももいるし、晩熟の子どももいます。
早熟な子どものことを考えるのであれば、どんどんと強度を上げたトレーニングにしてあげなければならない。周りと同じトレーニングで同じことを求めていたら、その選手のためにならない。
できることをやっていても成長しない。
反対に負荷が高すぎても、トレーニングにはなりません。順を追って少しずつ進んでいくことが大切です。
5.個別性の原則
個別性の原則は『個人の能力を考え、トレーニング内容を考えよう』ということです。
街のボランティアチームでは、できる子ども、できない子どもと様々なレベルの子どもがいて、なかなか個別に指導ができないのが現実だと思います。
でも、同じトレーニングメニューでも、コーチングを変えることで子どもの能力に合わせた指導が可能になります。
例えば、できる子どもには精度を求める、まだスキルが足りない子どもには、基礎的なことを求めるなど、指導者が見ているだけでは、子どもは上手くなりません。
だから、コーチングは大切。
『意識性の原則』を使って、何を意識させるのかを個別に与えてあげる。だから、練習前にミーティングで意識することを伝えない。どちらかと言うとシンクロコーチングで意識をさせる。
少年サッカーの指導者として
この記事ではトレーニングの考え方として『3原理5原則』を紹介しました。3原理は知識として指導者が持つべきもの、5原則は実践する場合に意識しなければならないことだと思います。
少年サッカーでは、つらいトレーニングは必要ありません。指導者がしっかりと目的を持ち、子どもたちが楽しめるようなトレーニングメニューを考えることが大切です。
子どもたちがふざけてしまう、集中してトレーニングが行えていない場合は『意識性の原則』や『個別性の原則』、『漸進性の原則』を守れていない場合が多いし、いくらトレーニングをしても上手くならないばあいは『全面性の原則』や『反復性の原則』が守られていない場合が多い。つまり、指導者のオーガナイズが悪いと言うこと。
僕の場合は、行き当たりばったりでメニューを決めることが多いので反省することもありますが、基本的には『3原理5原則』を意識してトレーニングメニューを考えています。
『3原理5原則』を理解しなければ、効率良く子どもたちがスキルを習得するトレーニングを行うことは難しい。
目新しいトレーニングメニューも引き出しとしては必要です。でも、少年サッカーのトレーニングで一番大事なのは、子どもたちが効率的にスキルの習得ができるか。
トレーニングを考えるときは、ぜひ『トレーニングの3原理5原則』を意識してみてください。子どもたちのためになるトレーニングを行えるようになりますよ。
コメント