あのコーチはベテランだから「子どもへの声の掛け方が上手いな。」とか、サッカースクールのコーチを観て「すごいな。さすがプロ。」と思っていませんか?
子どもたちにとってはベテランコーチ、プロのコーチ、お父さんコーチ、指導者を始めたばかりのコーチでもグランドにいる大人はみんなコーチ。
サッカー経験者でも、そうでなくても子どもたちはコーチとして観ています。
少年サッカーの指導者を始めて、一番最初に難しいと思うのは子どもに対する声掛けかも知れません。
なかなか、子どもたちが上手にならないのは指導者のコーチングの仕方が悪いのかも知れません。
上手なコーチングを行う指導者を観て「私には無理だわ。」とあきらめていませんか?
脱初心者を目指す指導者のためにコーチングの基本について解説します。
コーチングの基本
どうやって声を掛ければ良いのでしょうか?結論から言うと
正解はありません。
トレーニングで大切なこと
トレーニングを行うときに私が大切にしているのは
子どもたちが集中しながら内容の濃いトレーニングにすること。
子どもたちが集中して頭と身体をフル回転してトレーニングをすることで試合で使える技術が身につく。ダラダラとした雰囲気でトレーニングしても、そこで身につけた技術は試合のプレッシャーの中では通用しません。
どうやって緊張感を作るか
子どもたちが集中してトレーニングする緊張感は指導者が作ることが必要。
大声で怒鳴りつけて緊張感を出すことも可能ですが、そうすると子どもたちは怒られないようにと違う方向に集中してしまいます。
せっかくトレーニングで獲得して欲しい技術があるのに、技術の獲得を目的にするのではく怒られないようにとトレーニング自体が流れ作業のようにこなすだけになってしまうように感じます。
大切な子どもたちのの自主性
子どもたちが「サッカーが上手くなりたい」「試合に勝ちたい」という目的を持ち、
そのためにはどうすれば良いのかを考えて自ら取り組むようにする働きかけることが大切。
指導者がやらせるのではなく、自主性を持たせることで子どもたちはどうすれば良いかを考え、緊張感を持ったトレーニングになるのです。
子どもに自主性を持たせる方法
子どもが上手くなるために自主的にトレーニングをしてくれるとコーチも余計な労力を使わなくなるし、子どももドンドン上手くなる。一石二鳥ですよね。
子どもたちにそんなトレーニングをして欲しい場合は次のような働きかけをしてみてください。
答えを引き出す質問
子どもたちに答えを与えるのではなく、答えを引き出す質問をする。
サッカーのプレーは選手が判断し、選択するもの。
何が目的でそのプレーを選択したのか、どうしてその判断をしたのかを質問することで聞き出してみてください。
例えば、「今の場所(プレーエリア)でボール奪われたらどうなる?」とか
「早くボールを相手ゴール前に運ぶには、ドリブルとパスのどっちが良い?」
答えを引き出す質問の多くは、個人戦術の理解を深めるための質問です。
子どもたちには考えがあってプレーをしてもらいたいですよね。
間違った判断をしていれるのであれば、判断するための情報、その情報のインプットをする方法、判断基準をコーチングしてあげれば良いのです。
「なぜ?」の質問
プレーが上手くいかなかったとき、ミスを指摘するのではなく子どもたちに気づかせるために「なぜ?」の質問をしましょう。
「なぜ、ゴールが外れたと思う?」「どうしてトラップが上手くいかなかった?」「パスがもらえないのはなんで?」
なぜの質問をすることで子どもたち自身が、どこを改善すれば良いかに気づけるようになります。
もちろん、プレーの精度の基準は与えてあげなければいけません。
気づかせるトレーニング
スキルを身につけるために行うドリル系のトレーニングでも、このようにコミュニケーションを取りながら子どもたちに考えさせることを意識しましょう。
考えさせるトレーニングをさせることで、トレーニングのためのトレーニングではなく、
相手がいることを想定してマークを外す動きやトラップの方向など
色々なチャレンジを引き出す。
質問をするコーチングで出来るだけ試合に近いシチュエーションを想定させ、緊張感を持った良いトレーニングになります。
トレーニングのためのトレーニングにならないように気をつけてください。
気づかせるトレーニングのメリット
たくさん質問をして答えを引き出すトレーニングをすることで
子どもたちの「なんとなく」とか「とりあえず」のプレーを減らすことができます。
考えて言語化することで子どもたちの経験が知識になる。低学年のときから考える訓練をしましょう。
もし判断が間違っていた場合は、改善していけば良いんです。
「ああしなさい。こうしろ。」では子どもたちは言われたことをこなすだけのトレーニングになってしまいます。
コーチングの3つの手法
コーチングを行う場合、状況によって「ミーティング・コーチング」「フリーズ・コーチング」「シンクロ・コーチング」を使い分けます。
ミーティング・コーチング
トレーニングの意図やプレーの判断基準など、全員に対して説明します。
子どもたちを集めて作戦ボードなどを使い、どうプレーすれば良いかなど考え方、戦術を共通認識として確認することができます。
ミーティング・コーチングのメリット
ミーティング・コーチングのメリットは
- 共通認識を得られやすい。
- 意見交換ができる。
全員を集めて話をするので指導者、選手を含めてチーム全体の共通認識を確認することができます。トレーニングの前、試合の前などに
「こういったことを意識してやろう」「この場面ではこうしよう」などや
試合後「このときはこうした方が良かった」
「あの場面でのプレーが良かった」など
目標や振り返りなどを行うときに使います。
ミーティング・コーチングのデメリット
ミーティング・コーチングのデメリットは
- イメージがつかみにくい。
- 指導者の意見を押し付けてしまう。
実際のプレーをする前やした後に行うことが多いので実際の現象のイメージがつかみにくい。現実とかけ離れたイメージになる可能性があります。
少年サッカーのミーティング・コーチングを見ると、どうしても指導者からの一方的な話になってしまっていることが多いように感じます。子どもたちに対しての指導者の要求を一方的に押し付けてしまうことが多い。
答えを引き出す質問や「なぜ?」の質問をして子どもたちの意見を聞くことで子どもたちに気づかせることが大切です。
ミーティング・コーチングの指導法
指導者として改善点や出来なかったことを指摘することも大切ですが、出来たこと、続けて欲しいことも確認するようにしましょう。
子どもたちがネガティブなイメージを持たないようにすることが大切です。
また、どうしても指導者は外からの目線で話をしてしまいがち。プレーをしているのは子どもたちです。
問いかけをして子どもたちが色々なイメージや現象を引き出してあげることがチームや子どもたちの成長につながります。
フリーズ・コーチング
トレーニング中に子どもたちに伝える必要がある現象がでたときに子どもたちの動きを止めてコーチングします。
オープンスキルのトレーニング(判断をともなうトレーニング)のときに使うことが多いコーチングの手法です。
ミーティング・コーチングで子どもたちが理解した考え方や戦術についてより子どもたちがプレーの理解を深めることが出来ます。
フリーズ・コーチングのメリット
フリーズ・コーチングのメリットは
- 現象がわかりやすい。
- 共通認識を得られやすい。
ミーティング・コーチングと違ってトレーニング中に意識して欲しい現象が出たときにプレーを止め、デモンストレーションをしたり、質問をしたりして説明をするので子どもたちが現象と考え方、戦術について理解を深めることができます。
また一度プレーを止めて説明するため、プレーをした選手以外の子どもにも、説明するためチームでの認識を合わせやすい。
フリーズ・コーチングのデメリット
フリーズ・コーチングのデメリットは
- 子どもたちの集中が切れてしまう。
- ミスでフリーズをかけるとそのプレーをした子どもの心理的負担になる。
プレーを止めてしまうため、子どもたちの集中力が切れてしまいます。そしてミスに対しての改善を行いたいと指導者が思っても、子どもの受け方はミスに対して指摘をされたと思いがちです。
「~しろよ!!」のような命令や「なんで~したの?」と否定的なコーチングをすると子どもたちのモチベーションが低くなってしまいます。
フリーズ・コーチングの指導法
サッカーではミスはつきものです。技術的なミスに対してフリーズをすることで子どもたちは委縮しモチベーションが下がってしまいます。
また、あれもこれも改善しようとするとフリーズを多くしてしまいがち。
フリーズで指摘をされると子どもたちのストレスにもなるし、何が大切だったのか理解できなくなってしまいます。
このコーチング手法を使って説明するときは「プレーの改善点」に対してフリーズすることが多いと思います。
良いプレーに対してフリーズすることで子どもたちが認められたいと思うようになり、パフォーマンスが向上します。
雰囲気作りも指導者の役目です。あまり多くのフリーズをかけない。フリーズをかけるタイミング、良いプレーに対してフリーズすると良いトレーニングになります。
シンクロ・コーチング
シンクロ・コーチングは子どもたちのプレーを止めずにコーチングする手法です。プレーに対して具体的にタイミング良くコーチングを行うことが必要です。
オープンスキルのトレーニング(判断をともなうトレーニング)のときに使うことが多いコーチングの手法です。
コーチングを受けた子どもは状況や現象について把握しやすい。
シンクロ・コーチングのメリット
シンクロ・コーチングのメリットは
- 子どもたちの集中力を切らさない。
- 状況や現象を理解しやすい。
プレーの流れの中でコーチングを行うので子どもたちの集中を切らさず指導を行うことができます。
ターゲットとする現象が起こる直前や起こっている最中、直後にコーチングするのでコーチングされた子どもは状況や現象を把握しやすく忘れにくい。
シンクロ・コーチングのデメリット
シンクロ・コーチングのデメリットは
- チームの認識が合わせにくい。
- 伝わりにくい。
基本的にプレーをしている子どもに対してのコーチングになるので、指導を受けている子どもに伝わっても、他の子どもには伝わらない。他の子どもにも同じコーチングを行う必要が出てきてしまいます。
また、子どもたちはプレーをしている状態なのでコーチングを受けている子どもは、ボールや試合展開に意識が集中しています。なので、聞いているようでも聞いていないことがあります。
シンクロ・コーチングの指導法
シンクロ・コーチングは声の掛け方では命令になってしまいます。改善のためのコーチングであれば答えを引き出す質問をすることで次のプレーの改善につながります。
プレーを止めずに指導するため、現象や状況が出たタイミングが大切になります。コーチングの内容も具体的に行なう必要があります。
また、良いプレー、出来たプレーに対して褒めることも大切です。
コーチングは奥が深い
指導者が10人いたら10種類のコーチングがあります。自分のスタイルでコーチングが出来るようになるには、経験と時間が掛かります。しかし、何もしなければ始まりません。
ミーティング・コーチングで説明してから、シンクロ・コーチングやフリーズ・コーチングで改善していくことが多いですが、何をドコまでどういった言葉で指導をすれば、子どもたちが習得できるか。
私も日々考え、実践し、悪いトコロは改善しコーチングを行っています。
指導者が変われば、選手は変わる。選手を変えるためには指導者が変わらなければいけません。
あなたの指導は選手のためになっていますか?
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