最近、指導者が感じる良いコーチと保護者が思う良いコーチは大きく違うと感じます。とても良いコーチなのに保護者からの苦情でチームを去ることにさせられたコーチがいました。
保護者目線での良いコーチは教えるコーチ、指導者目線での良いコーチは子どもたちに判断をさせているコーチ。
子どもたちが自主性を持って行動をさせるには失敗も多いし時間もかかります。でも、その経験をさせることによって子どもたちは成長をします。
少年サッカーでは試合中にするプレーを徹底的に教え込み、そのために必要なプレーのスキルを身に付けさせることで勝つチームにすることができます。そのための運動神経が良い選手を集めれば、さらに強いチームになっていきます。
サッカーは勝ちにこだわり、勝ちきることは重要です。しかし勝つためのチーム作りで子どものためになるのでしょうか?
ぬるい指導者だと思われるかもしれませんが、あなたの子どもが将来、サッカーがつまらないと言い出したらどうでしょう?
中学生、高校生になったときに
「お母さんがサッカーをやらせたんじゃん!!僕はやりたくなかったのに!!」
と言ってサッカーを辞めてしまったら責任を取れますか?
ウソのような本当の話
少年サッカー時代にAくんは身体も大きく足も速い、そして幼稚園の時からサッカーを始めたので技術も持っていました。
もちろんトレセンにも呼ばれてお父さんやお母さんからも自慢の息子でした。
周りの子より成長が速かったで少年サッカーの試合で活躍できていました。ただ6年生になっても周りの状況を観ることができず、判断もできなかったので、取りあえずのプレーばかり。
そのチームを指導していたコーチの方は、せっかく良いものを持っているAくんが、このままではジュニアユース年代(中学生)、ユース年代(高校生)になったら活躍できない選手になってしまうとの危機感を持って指導に当たってたそうです。
でもAくんも保護者もコーチの方の話を理解できない。Aくんは判断ミスをしても身体能力や技術でどうにか誤魔化すことができた。
コーチがいくら「判断が必要。判断をしてプレーしよう。」と指導しても何を言っているのか解らない。
他にもっとできてない子がいるのにAくんだけ言われるの?という感じだったそうです。
チームへの保護者からの苦情
Aくんを伸ばそうとしているコーチが「Aくんをいじめてる」とか「そのコーチはAくんのことを嫌いだから厳しい指導をしている」とその保護者が苦情を言い始め、チームで大問題になり、そのコーチの方はチームを去ることになったそうです。
そして若いコーチがそのチームを指導することになったんですが、子どもたちにプレーを選択することをさせず、徹底的にパターンを教え込み3ヶ月で見事勝つチームに仕上げたそうです。
実績が欲しい若いコーチとその親バカな保護者の利害関係が一致したんですね。子たちも勝ち続けることができて楽しく卒団していったそうです。
ジュニアユースでの活躍
Aくんはトレセンにも呼ばれ、少年サッカーのチームでもキャプテンとして活躍していたので強豪のクラブチームに合格してサッカーを続けたそうです。サッカーの強豪高校へのパイプもある強豪チームに入り、本人も両親も高校はサッカー推薦でと思っていたみたいです。
ジュニアユースではU-13リーグ(中学校1年生で構成されたチーム)の前半戦は活躍出来たそうですが、周りの選手たちが成長し、身体能力に差がなくなってきた中学校2年生のタイミングで試合にも出れなくなってしまったそうです。
そして高校からも推薦が貰えず
中学校2年生の夏からは下の学年の子にポジションを奪われ、ジュニアユースの最後の大会はベンチにも入れなかったそうです。
そうなると高校へのサッカー推薦も貰えず。
「お母さんがサッカーをやらせたんじゃん!!僕はやりたくなかったのに!!」と母親に切れてしまったそうです。
その母親はAくんを試合に使わないクラブチームに文句を言い、少年サッカー時代に徹底的にパターンを教え込み3ヶ月で勝てるチームにしてくれたコーチにも苦情を入れたそうです。
その後、サッカーではAくんの話を聞かなくなってしまいました。とても残念なことです。
子どもを伸ばすも潰すもあなたのコーチング次第
私のチームでも同じようなことがありました。成長が早く身体能力が高いだけで判断が出来ない子どもに
「今どんな状況だった?」
「周りを観て判断するんだよ。」
と指導を続けましたが、その選手、選手の保護者は「何で教えてくれないの?うちの子は教えれば出来るのに。」とチームに苦情を入れてきました。
あいにく私が指導していたチームにはサッカーを知っている保護者が多く、その母親にチームとして一生懸命、その子のために指導しているということを説得しました。
納得させることが出来ずにその親子はチームを出ていくことになりましたが。。。
本当に「良いコーチ」とは
良い指導者とはサッカーを通して子どもたちの成長を考えているコーチだと思いませんか?
少年サッカーをしている子どもたちは成長の過程です。子どもから大人になる年代です。全て教えてその通りにプレーをさせる指導では、プレーの善悪も理解できず、自分で考え、判断ができない選手になる危険性があります。
また人間形成としても大切な時期です。その時期に何も考えないで言われたまま行動すれば上手くいく。という考えを持ってしまうと大人になったとき、どういう大人になるか想像するのは容易ですよね?
良いサッカー選手は人柄も良い選手が多いです。周りの人の足を引っ張って上に這い上がるような人間になって良いのでしょうか?
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